客人をもてなす――心がまえも手段も色々あるけれど、肥松の茶托でおいしいお茶とお菓子を出すならば、歓迎の気持ちはきっと相手に伝わって、喜んでいただけるのではないでしょうか。
香川県は、瀬戸内海に面した地域の中でも特に黒松の名産地です。平野部が海に面し、日照時間が長く、降雨量が少ないこの土地は、木にとって決していい条件とはいえません。
でも、松という木は強い。そうした環境の影響を受けながら、たくましく成長し、様々な表情の木目を生み出すのです。
黒松、赤松が100年以上育つと、中心部分に松やにが蓄積され始めます。それからさらに200年以上育つと、良質な松やにを抱いた中心が太く形成されます。その中心部分だけを用いた品物が「肥松」。したがって、この茶托は樹齢300年以上の黒松を伐ってから、20年以上の歳月をかけて自然乾燥させ、ようやく生まれた製品なのです。
昔から「肥松には神が降臨する」といわれ、家内安全と繁栄を願って新築する家の床板などに使われたというのも納得ですね。今でも、京都や箱根に残る町屋などで見ることができるそうです。
しかし、近年は開発による伐採や、松くい虫の被害で枯れてしまったりで、樹齢300年を超える黒松が皆無に近い状況だといいます。クラフト・アリオカの有岡成員さんは、「先代からのストックを大切に保管しながら、少しずつ作っている」と話します。
太陽に透かすと浮かび上がる
300年蓄えた松やにの結晶
この肥松の茶托。光にかざすと、松やにの部分が透けて見えるんです。まるでべっ甲のような赤茶色。松の命そのものを見ているようで、300年という長い歳月に思いを馳せずにはいられません。けれど、ずーっとこのままの姿を留めないのも木のもつ魅力の一つ。
箱などにしまいこまず、しょっちゅう使ってください。使えば使うほど、拭けば拭くほど、どんどん深い色に変化し、やがては漆を塗ったような艶が出てきます。
決して手頃な金額ではないので、「もったいないな」とか「特別な時だけ使おう」とか考えてしまうと思うんです。でも、肥松にとってはそれこそもったいない。
「三代かけて変わってゆく」という肥松。これから先の人生のおともにいかがでしょうか。
職人 : |
クラフト・アリオカ 有岡成員(香川県高松市) |
寸法 : |
直径約12センチ、中央の円の直径約6センチ
※一回り小さいサイズ(直径約10.5センチ、中央の円の直径約5.2センチ )もございます。価格は26,250円です |
納期 : |
1週間前後 |
手入れ方法など: |
- できるだけしまいこまず、時々、木綿の布で空拭きしてください
- 使う前に水で洗い、使った後はオリーブ油など植物性の油で拭いていただくと、美しさが増していきます
- 茶托に水やお茶をこぼした時は、水分を全体に拭きのばしてから空拭きしてください
- 環境の変化によって、松やにが出ることがあります。その際は、空拭きもしくは植物性の油で拭いてください
|