――商品説明の前のお知らせ――
大好きだった生駒漆芸さんは、大変残念ですが廃業されました。
もうお取り扱いできない以上、本来ならこのサイトからも情報を消さないといけないのかもしれません。
ですが、お店兼工房を訪れた時に感動した、お店の凛とした佇まい、他では見たことのない輪郭をもつ美しい器の数々、上品な女将さんのあたたかなご対応……。
大切な思い出とともに、在りし日の生駒漆芸さんに思いをはせる場として、掲載を続けさせていただければと思います。
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透明感のある鮮明な朱色、つるんとした触感。
目にも肌にも心地よいこちらの漆器は、亡きご主人・親雄さんの遺志を大切にしながら工房を守る奥さまのもと、熟練の職人さんが丁寧につくり上げています。
秋田市内にある工房を訪ね、初めてこの器に出合うまで、私はこれほどまでに鮮やかで艶やかな朱色の漆器を見たことがありませんでした。しかも、場所は北東北・秋田です。驚くと同時に、「南国っぽい色だな」と不思議に思ったものです。
並べられた品物をひとしきり見せていただき、奥さまのお話を伺って、その謎がとけました。
父の弘さんは、東京美術学校(現・東京藝術大学)の漆工科を卒業後、富山県で漆器産業の育成に携わります。そののち、沖縄に渡り、琉球漆器の改良に取り組むため、そして「職人の地位をもっと向上させなければ!」という使命感から会社を創業されたのだそうです。
ご主人の親雄さんも東京美術学校で学びました。しかし、第二次世界大戦に召集されてしまいます。終戦後は父・弘さんの会社を手伝うつもりでしたが、旧ソ連からの帰還者だということで沖縄への渡航が許可されず。親雄さんは、父の郷里である秋田に工房を構えることに決めました。
それから約30年後、父・弘さんも沖縄から秋田に戻り、生駒漆芸工房の職人育成に尽力されたということです。
南国のぬけるような空の青さとまぶしい太陽を連想させる朱色の背景に、そのような歴史があったのですね。
持った瞬間、すっと手になじむ
洗練されたカーブにうっとり
心が晴れ晴れするような朱色に惹き込まれ、器を手に取った私をさらなる感動が待っていました。
初めて持つというのに、すーっと手になじむのです。手のひらにぴったり寄り添う器の丸みが、まるで両手で水をすくったような感触でした。
「主人は自分できれいに図面を引いて、木地師さんにお願いするんですよ。思い通りに仕上がらない時は『デザインは基礎だ』と言って、理想の形が完成するまで帰って来ませんでしたよ(笑)」
そう語る奥さまは少し誇らしげ。亡きご主人の残された美しい形は、今も色あせることなく生き続けているのですね。
ところで、漆器は繊細で扱いにくいと誤解されがち。
でも、実際は全くそんなことはありません。沸騰するぐらい高温のものでなければ、油ものも汁ものも平気ですし、使った後も水かぬるま湯で洗ってふくだけ。
煮物やポテトサラダなどの定番メニューも、この器に盛るととっても引き立つので、私はいつも頼りにしています。来客時にはお菓子鉢としても使えます。シンプルなデザインなので何にでも合うのです。
生駒漆芸工房で、父と子が互いに手を携えて追求した「使える漆器」「美しい器」。
料理も、器そのものも生きるという理想の漆器が、今も奥さまと職人さんのもと大切に受け継がれています。
職人 : |
生駒漆芸工房(秋田県秋田市)
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寸法 : |
直径18センチ×高さ4.5センチ |
納期 : |
入手不可 |
手入れ方法など: |
- 漆は汚れがつきにくいので、水かぬるま湯ですすぐだけで十分です。もし、気になる場合は布巾などの柔らかい素材に中性洗剤をつけるなどして洗ってください。洗った後は、柔らかい布で拭いてください
- 傷みの原因となりますので、以下のことはしないようお気をつけください(・長時間水に浸ける、・熱湯を注ぐ、・直射日光に長時間さらす、・冷蔵庫に入れたままにする、・電子レンジ、オーブン、食器洗い機、乾燥機のご使用)
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