博多駅からJR鹿児島本線で南下すると、筑後川を越えてほどなく久留米駅に到着します。この久留米の街に工房と店舗を構える井上籃(らん)胎(たい)漆器が創業したのは明治時代。初代・井上熊吉さんは昭和天皇のご即位式で使われた屏風をつくられたという、名実ともに由緒ある会社です。
写真をご覧になって「籃胎漆器ってこのことか!」と思われた方も多いのではないでしょうか。一度は見たことがあっても、それが「籃胎漆器」という名の工芸品だと知る機会はあまりないように思います。「籃」は竹籠(かご)、「胎」は身ごもるという意味を表していますので、「籃胎漆器」とは、竹籠を素地とした漆器のことなのです。軽くて丈夫、特別な手入れなどしなくても何十年と使い続けていただけます。
カゴ編み、漆の重ね塗り、模様出しなど
手間のかかる仕事が目白押し!
工房を見学させていただきました。まず材料の備蓄庫へ入ると、節ごとに割られた青い竹が目に入ってきます。こちらで使う竹は、地元・耳納(みのう)連山で採れた真竹だけという徹底ぶり。それらの竹をわずか数ミリ幅に裂いて、編める状態の「竹ひご」にする作業もこちらで行います。
工房は2階建てで、工程によって部屋が分かれています。その日中にいらっしゃった職人さんは10名ほど。皆さんこの道35年から60年の熟練ばかりです。
カゴの編み方の種類は様々。私が伺った時は「連続枡網代」が編まれていました。商品によって使い分けられています。こちらの梅型お盆は表が「亀甲」、裏が「枡網代」です。制作工程の詳細は、あらためてブログで紹介させていただくとしまして、作業はカゴ編みからカゴの成形、漆塗りへと進んでいきます。まさに、漆が竹籠をはらんでいく工程です。そして、模様を削り出す作業へ。
そうなんです。籃胎漆器の代名詞ともいえる黒地に赤の模様。朱色の漆で表面に模様を描いているのではないのです。じつは、黒い漆の下に、朱色の漆が塗られていて、このお花の場合は砥石を使って表面をとぐことで模様が生まれているのです。
削り手によって、同じ模様でも1つ1つ雰囲気が異なりますが、もちろん、仕事の丁寧さに変わりはありません。「大胆な性格なんだろうなぁ」とか「繊細そうだなぁ」とか職人さんの気質を想像するのもまた一興。ちなみに、写真のお盆は朱色の花模様がはっきり出ているので、わりと大胆な方が削り出しをされたと考えられます。
職人 : |
井上籃胎漆器(福岡県久留米市)
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寸法 : |
直径約24センチ |
納期 : |
1週間前後
※同じ形で下塗りからすべて天然漆で塗ったものもございます。そちらは34,000円(内税)で、納期は1、2カ月いただきます。「お問合せ」フォーマットまたはメールにてご注文くださいませ |
手入れ方法など: |
- 汚れたら、水かぬるま湯で洗って、乾いた布で拭いてください
- 硬いところにぶつけたり、直射日光の当たるところに長時間放置したり、100度近い熱さものを直接のせますと、傷む原因となりますのでご注意ください
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